2017-09-19

『アイデアの作り方』・・・発想法を定式化した、最もシンプルな本

Categories: Tips 読書 書籍
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60分で読めるけれど 一生あなたを離さない本

今日久しぶりに『アイデアのつくり方』(ジェームス・W・ヤング 著)という本を読んだ。この本、自分が知っているなかでは最もページ数の少ない本の一つで、訳者による解説ページを除くとわずか60ページほどしかない。しかも文庫本サイズなので、どれだけ内容が短いかがわかる。

それを示すように、本の帯には冒頭のようなキャッチコピーが書かれている。さすが、著者が広告のプロフェッショナルというだけあって、帯のキャッチコピーもそれを意識したキャッチーなものになっている。

アイデアのつくり方
アイデアのつくり方
posted with amazlet at 17.09.19
ジェームス W.ヤング
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短い文章にアイデア作成の手順が凝縮されている

解説ページにも書かれているが、この本の薄さは決して内容が薄いというわけではない。必要十分のコンテンツを収録していて、非常に簡潔にまとめられている。

正直、このブログを読んでいる暇があったら、多分一冊を読んでしまえるのではないかと思うほどの短さで、ざっとまとめると次のようなことが書かれている。

  • 『アイデアのつくり方』を出版しようと思った理由

  • アイデアの作り方は、はたして明文化できるのか

  • アイデアの作り方があったとして、それは万人が実現可能なものなのか

  • アイデアの作り方の5つの手順

  • 初版出版後にあった意見や質問に対する補足

非常にシンプルな構成で、しかも単に手順を示すだけではなく、それがはたして読者に受け入れることができるものであるかという考察まできちんと書かれている。

この内容は、結論からいえば、アイデアのつくり方を、多くの人が実践できる簡潔な手順として明文化されている。ただし、本文中にも書かれているように、この方法は一見単純だが、実践は非常に大変で、一筋縄ではいかない。

アイデアを出すための5つの手順

さて、実際に書かれているアイデア発想法の5つの手順とはどのようなものかを、以下に書いておきたい。

ちなみに、本文中でも使われている比喩で、食べ物が身体に入ってきて消化される過程になぞらえてイメージするとわかりやすい。

  • (1) 素材をできる限り多く集める。(…食材の購入)
  • (2) 得られた素材を十分に咀嚼する。(…食べ物を咀嚼して飲み込む)
  • (3) 自分の身体が無意識に消化するのを待つ。(…食べ物の消化)
  • (4) 自分の最もリラックスしているとき、アイデアとしてひらめく
  • (5) 現実世界に適用させるために、アイデアに手を加える

「5つの手順」の意外さと難しさ

これらの手順のなかで、自分が最も難しいと思うのが (1)「素材をできる限り多く集める」という過程だ。

自分はアイデアを作るということをイメージするとき、ついこの過程でいう (2) や (3) からがアイデアを発想する過程だと思ってしまう。

例えば「ニュートンの万有引力」の逸話では、ニュートンはりんごが落ちるところを見て、まるで地球がりんごを引き寄せているように見えるところから万有引力をひらめいた、とされている。

この話だけを聞くと、ニュートンがいかに天才で、いかに常人と違った発想をしていたのかということだけが目に付く。しかしこれは上記の手順における (4) のみをピックアップしたもので、最も大切なのはいかに事前に入念な準備をして、そのことを考え続けておけるかにあると自分は思う。

入念な準備と、考え続けることの重要性

ここで自分が思い出したのは、別の書籍である『はじめて考えるときのように』(野矢茂樹 著)に書かれていたことだ。

この本には、哲学における思考のプロセスをまるで絵本のようにわかりやすく説明してある。その中に次のような一文がある。

「考える」ということばは、そもそも何かすることに対してつけられた名前じゃないんだ。それはいろんなことをすることだし、何もしなくたっていい。ただ、問題をかかえ、ヘウレーカの呼び声に耳を澄ますこと、研ぎ澄ますこと。

この一文が、アイデアを発想するときの段階を非常に簡潔に物語っていると思う。確かに、その過程を他人が見れば、普段はぼーっとしている人が、急にふとした瞬間にアイデアをひらめくようにしか見えないかもしれない。

自分は、この考え続けるということが最も難しいことだと思うし、このことを可能にするのが「いかに素材を多く集めるか」ということだと思う。

何かを考えようにも、そもそも問題提起が必要だし、その問題について十分に調べておかないと、考えることはおろか問題を知ることすらできない。

しかし、自分はいつも何かを考えることを先に進めてしまって、その前提となる調べることを飛ばしてしまう。だから良いアイデアが浮かばないのだと思う。

もしろくに調べもせずに考えることをしてしまうと、自分が考えたことが「新しい」のか「古い」のかはわからないし、どんな思いついたことでも「画期的」なように錯覚してしまう。

大学で論文を書く練習をさせられていたとき、ゼミの先生は先行研究について口を酸っぱくして言っていた。これはそういうことだったのかと今になってわかる。

現実に適用させる段階の難しさ

また、もう一つ自分が忘れがちな段階が5番目で、「アイデアを現実に適用するために、思いついたアイデアに手を加えなければならない」ということだ。

著者はこの手順について、多くのアイデアがここで陽の目をみないことになってしまう、と書いている。

どんなアイデアも、仮にどこにも公開せず、批判を浴びないまま心の中に仕舞っていては、全く意味をなさない。(自分はいつもそうしてしまうけど・・・)

例えば、今人工知能として非常に注目されている「ディープラーニング」が分かりやすい例だ。爆発的に注目された2010年代以前にも、その原型となる「ニューラルネットワーク」は存在していた。しかし一度は注目されたものの、その後陽の目をみることなく忘れ去られていたらしい。

理由は、実際に複雑な事象に適用しようとして計算すると、計算が非常に困難であったことだ。それを可能にしたのが「バックプロパゲーション」と呼ばれる技術だ。

つまり、いかに人工知能のアイデアが画期的だったとしても、実際の問題に適用できなければ全く意味はないということだ。

自分はこの「現実に適用させるために手を加える」というプロセスがいつも頭から抜けているので、どんなに良いアイデアが浮かんでも、実際には何も産んでいない。…まあそもそも、自分のアイデア自体、前述のようによく調べもせず考えているのが理由かもしれないが。

まとめ

今回は『アイデアのつくり方』という本について、自分が特に難しいと思うプロセスについて取り上げてみた。

もちろん自分の私情や勝手な解釈が多分に含まれているので、実際に気になった方は本書を読んでいただいたほうが百倍勉強になると思う。

繰り返しになるが、解説文を除くと、本文はほんの60ページしかないので、一時間もかからず読んでしまえるはず。

でも自分は結局のところ、その "ほんの60ページ" を自分のなかで解釈するまでに、何度も何度も読み返している。なので結局一時間どころじゃなく時間がかかっている・・・というのは内緒。

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